『赤錆びと渇きの。』感想

第4回Text-Revolutions戦利品。
跳世ひつじさんの薄い本。

■ タイトル:赤錆びと渇きの。
■ ジャンル:ラブ&バイオレンスなファンタジー

繊細な美貌の青年(圧倒的童貞マザコン臭)と人間でも人形でもない『少女人形』が、
殺し殺され痛みを与え合って、支配し支配される関係性に収まる話。

どこかおとぎ話のような、箱庭のような、『つくられたもの』感のある街と、
やけに生々しい生と死の感触。
そして、赤錆色の雨が美しい登場人物たちを汚していく…。
絵面の時点でいろいろやばいです。
そこに暴力やら体液やらが絡んでくるのでもうたいへんなことになっています。
ですが、汚さに負けないくらい、耽美さや少女性も感じます。

同じ世界観の『眩暈の紫』よりも読みやすい印象。
でも、登場人物の関係性は『赤錆』のほうがえげつないというか、危うくていびつかも。
だからこそ、麻薬っぽい魅力を感じます…。

とにかくえっちでした。
自力ではなにもできないくらいボコボコにされた青年を丸裸にして手当するのはセックスですし、
相手に自分の手を血が出るほど強く噛まれて興奮する(具体的に言うとあえぐ)のもセックスです。
(ついつい「セックス」という表現を使いたくなるような作品であることを察していただきたい。)

人間を模した生命体であるオルガが(料理とかはできない仕様とはいえ)自立して生活しているのに対して、
マリアは青年と呼べる程度には大人ですがすごくダメな感じです。
満たされなかったママ成分をオルガで満たそうとしているような気がしてなりません。

オルガとマリアはそろわないのだ。決して。同じになれない。誰もがそうであるように。(p.68)

セックスだのママだの好き放題書きましたが、この作品のこういう要素がたまらなく好きです。
マリアとオルガは支配される側とする側とにわかれて絡み合ってゆくけれど、
本質的には異なる存在だから、もつれ合ったところで1つのものにはなれない。
そんなふうに勝手に読んで、ひとりニコニコしています。

ちなみに全年齢向けです。でもエロ本です。