覆面作家企画7 Eブロック感想

覆面作家企画7 Eブロックの感想です。
ツイッターでつぶやいた内容に加筆したりしてなかったり。

E01 会長の戸隠~高原学園生徒会記録~

ぞくぞくと現れる登場人物名に元ネタありそうだな…?と思いながら読み進めたけど、やっぱりこれは日本神話ベース…! タイトルで気づかなかった自分に遺憾の意。
めっちゃ正統派学園青春モノだった! 文章も言い回しのまだらっこしさとは無縁で、すぱすぱアタマに入ってくるから、ストーリーの正統派っぷりを素直に受け止められる。
だからこの子が主人公なんだなぁ、という説得力のある展開。ストーリーがどストレートだからこそ、主人公が狂言回しだったら興ざめしかねない。そのへんのさじ加減もいい感じだなー。

E02 ヒロイック・ガーリッシュ

力強い青春モノ。力強いというか、くもり湿りけとは無縁というか。
女子同士なのにさやわかできりっとしてて、でもちゃんと女子力高いというのは実に尊い。温かい光じゃなくて、すきっとした鮮烈な光なのも実によい。
主人公のこころは歳相応にやわらかい感じなんだけど、ところどころ挿入される短文の連なりが、なんだか剣舞みたいでかっこよかった。こう、しゅぱっとがちんっと刃が宙を裂くような、刃物同士がぶつかりあうような、ソリッドなかっこよさ。激しめ、鮮烈で、歯切れがいい。
それはともかく、あゆりも美月もかわいいから、私も女の子の写真いっぱい撮りたくなりましたね…冷静に考えなくても事案だよ…。

E03 明日の行方

仕事ってなんだろう…とか、最近父親が爺さんになってきたな…とか、とりまくあれこれに重みを感じるようになってきた矢先に、こういう話って!泣くわ!
日本人名じゃないからって油断していたら、めっちゃリアルハート(?)に突き刺ささりましたね!
そして、冒頭一行目で「若くして後退しつつある黒髪」ってのがまた生々しくて泣ける( ; ; ) 最高( ; ; )
ブロートみたいにちょっとダメなところのあるひとのほうが共感できます…。
そして、そんなちょいハゲのブロートと話して、生きようと決めた老人の姿に、自分ではダメだダメダメって思っていても、気づかないうちに別の誰かを救ってるのかもしれないな!という可能性を示されて、読後感の晴れ晴れとした感覚が底上げされた感じ。

E04 殺人調書記録、あるいは初恋の甘い輝き

これはまた…面妖な…。
作品の形態よりも恋バナがやばすぎて、途中で(早くなんとかしろ!)って切に思いましたね…。たぶん読んでいる自分の目が死んでいたのでは…。
でも、タイトルで期待していたものが詰まっていておもしろかった! ぜったいえぐってくるし、殴ってくるし、素直におもしろいって言えるタイプの話じゃないと信じて読みはじめたので!
この作品のおもしろいところ、というかめちゃくちゃ効果的だなすげー!と感じたところは、感情を排除したフォーマットの無機質さが、あの狂った聴取内容を逆に際立たせているところでした。コントラストってやつですね。

E05 身代わり

Eブロックは怖くなくて快適だなー(いや1つ前は怖かったけど心の準備はできていた)と思ってた矢先にこれか…。こっっっっっっっわ!
ふつうに生きていたのにこんなことになるとか、血も涙もなさすぎる…。ことの根源を辿ると神々の意志だから、どうすることもできないのがまた…。
E04でも思いましたが、本人が「ふつう」に生きていても、他者の思惑で自分にとっての「ふつう」や「日常」があっさりと、なんの前触れもなく奪われてしまうことがあるのだなーと背筋ひんやり。私もふつうのひとなので、この感覚はすごくこわい。
しかも、この作品の「身代わり」になったひとは、死んで終わりになるわけではなくて、永遠に閉じ込め続けられるとか…。ハイパーめっちゃこわすぎる…。

E06 娑婆電光クロスロード

なんだよこの脳汁出そうなくらいカッコいいタイトル!と思いながら読んだら語り口もかっこよすぎて脳汁出た。そのものずばりをザシュッと語る感じではないのに、歯切れがいい。
物の怪の喋り方が昔っぽいのに対し、人間の子の喋り方がふつうっぽいのが、クロスロードしている感あふれてていいなぁ…。
語り部が太陽だって、最後の最後で示唆される構成もスタイリッシュ。かっこよさに隙がない。

E07 暗夜航路 Eclipse route

結婚を申し込みたいレベルで血湧きにく踊った…。
わからなそうでわかりそうな単語が出てきた時点でわくわく。わからなかった単語があとで明らかになってテンション上がる。
序盤、「壁」に語った内容が気になってその牽引力が「(今は)いろいろわからなくても構わない!」と読み手である私を勢いづかせてくれたし、ルルールはルルールだしめっちゃかわいいし気がついたら出産しているし、設定も言葉選びもいちいち心を掴んでくるしで、すごく楽しかったー。やっぱり竜にはまたがりたい(下ネタではない)。
「>恒星ベルタはウレスの両頬を掴んで離さなかった」って表現がめちゃくちゃ好き。他にも好きな表現はあるけど、なぜかこれが一番好き。そしてこの表現が、後に推理のキモになるのであった――。

E08 電子レンジ、ひかる!

ほのぼの系だな…とにこにこ舐めてかかったらしんだ。容赦なく腹筋を狙ってくるタイプの話だった。完全に油断していた…。
ノーベル賞のところでカレー噴いたし、中盤の注釈のくだりで我慢できずに声出して笑っちゃっいましたね…。いやあの注釈は笑うだろ。笑うしかないだろ。思い出しただけで笑っちゃうんだけど、今(初めて読んでからから1ヶ月経過後)も笑っている。
終盤のアレはお馬鹿だからこそやけに説得力のあるオチで、技巧派すぎてとても愉快な気持ちに。
電子レンジの仕組みはちょっとかじったことがあったので瞬くんの言っていることはなんとなくわかったような気がしたけど、これが冷蔵庫の話だったらまったく理解できなかった。だから光くんに対する親近感やばい。

E09 光の先へ

はーん、ファンタジーかぁ…。と何気なく読みはじめたら、わたくし好みな話でしんだ…。
MPを削られる感じではないんだけど、「あ…」ってなる要素がちりばめられていて、つらいとも哀しいともとれないよう感情が引き起こされ、考えさせられる感じで、好きだな―って。
典型的?わかりやすい?魔物の台詞が、実はメイファの妄想遊びでした…って、読み手を殴ってくる展開だし、その後の「うわぁ…」感が大変心地よくて特に好き。
メイファが生の実感を得られる道を選んだことに、生というものが強く肯定されているような気がして、こういう動物的な生というものが大好物だからフィーバー通り越してニルヴァーナだった。
この作品を読んだ結果、私は光の先へは行くことはできなかったけど、光のなかでやすらかな顔をして徐々に消滅していきました。

E10 彼は暗い夜雨の中に差し込んだ、一条の月の光のようだった

「ひとは所属に失敗すると死ぬ」という言葉が脳裏をよぎりましたが、この話を説明する言葉としてあながちまちがいではないかなぁ、と。
所属を得た人間は強いし、そのことがカティアの姿を通じて描かれていて、読んでいるだけで胸が熱くなりましたね…。
なんとなく、前半は読み手である私はカティアを少し離れた場所で、少し俯瞰で見ていたけど、後半はカティアの背中を追いかけている気分でした。
静かだけど熱くて、冷たいところからだんだん熱く高揚していく感じ。タイトルの通り、一条の光が徐々に太くたしかなものになってゆくような印象。でも最後まで静寂。作品の重量感が今も残っていて、ハイテンションな感想は書けない。