覆面作家企画7 Dブロック感想

覆面作家企画7 Dブロックの感想です。

D01 セイシした闇の中で

やだーホラーじゃないですかー!と心のなかできゃーきゃーして、でも「あなた」が怖がっている様子がないから、実は怖い話じゃない…?いやでもこれ死ぬんでしょ!?さいご死ぬんでしょ!「私」みたいに!!とぐるぐる考えていたら、エレベーターが下がりはじめてほっとしました…。
「あなた」に怖がっている様子がなかったのは、「私」の話に思うところがあったからかな…。ある種の賢者モードだったからこそのファインプレー…。
これで死んじゃったら想定の範囲内だから、ほっとする終わり方でよかった。闇のなかからはじまったけど、光のある終わり方だなー。

そう思ったときが、私にもありました。
ラストであれ?と思って、何度か読み返して、死にました。

D02 ずっと一緒でいてね(※注)

このタイトルでさらに「※」がついてるなんて、いやな予感しかしねぇ(^ω^)
と思いながら読み始めたものだから、ちりばめられた「ねえ」がものすごくねっとりと感じられました。
いや、まあ、実際はねっとりなんてレベルじゃなかったんですけど…。

背中に薄ら寒いものを覚えながら、妹さんへの愛情に満ちたお姉さんの独白を読むのは、へんたいドキドキしました。
ほほえましすぎて、気がついたらニヤニヤしていましたからね…ぜったい読んでいるとき悪い顔してましたね…。
※がついてたから凄惨なエンドだったらどうしよう!とわくわくしましたが、血涙がちょちょぎれるというよりも黙りこむしかないラストに、なぜか満足感を覚えてしまいました…。

D03 ね、あなたの笑顔も食べたいな

きらめく灯を白い息ごしに見ているようなイメージ。
ふわっとした感触なんだけど、そんななかにも、凛としたものがあるような。冬の話だからかな。
懐炉のアナログさ(?)にぬくもりを感じました。この懐炉のぬくもりに似た熱を、主人公ちゃんはひとびとから感じていたのかなぁ。

ところで、D01~D02の怖い話の流れを引きずりながらこのお話を読んでしまいまして…。
そのためラスト2文がとても恐ろしいもののように思えてしまいまして…。
「心を食べられちゃう」って意味がわかると怖い話なのでは!?とちょっとだけビビってしまいました。

D04 人間スープはキスの味がした

私が書きました。
それはともかくD01~D05のタイトルの並べ方がこわい。

D05 嘘つきな唇(※注)

すんごい文章きれいだなーと!思いました。
こう、耳の奥のほうが、きーんと引きしぼられるような感覚が味わえる文章。硬くて鋭くい金属の先端で、途切れることなく細い細い線を描いているようなイメージ(伝わる気のしない感想)。
わりかしシンプルなんだけど、迷いがないというか、ひとことひとことが正確というか…。
結構えげつないというか容赦ない暴力描写もあったような気もしますが、ぜんぜん汚くなくてすごい。
そして奇をてらわないストーリーが、文章にとても合っている…。素材がよいひとの美貌を引き立てるのは、シンプルなドレスってわけですね…。
遺されたライが不憫だなぁ。闇のなかにひとり遺されてしまった感が…。

D06 佳人薄明

しなやかで乾いた空気感と、自分の足で立っている女性の姿と、スケール感と、文字数以上に感じられるボリューム感と…一粒で何度おいしいのやら。
なんというか、とにかく清廉! ストーリーもさることながら、文章そのものも心地よい…。
あまり目にしない表現が頻出するから、文字列をなぞってから噛み砕くのに時間がかかるけど、それも含めてリズムになっているんですよね。
わりと頭を使わずに小説を読んでしまうクセがあって、ちょっとでも凝った構成だと一読しただけでは内容を把握できないという弱点が私にはあるのですが(他にもいっぱいあるけど)、
そんなわけでこの作品も一回読んだだけでは「あーなるほどなるほどー」とはならなかったのですが、文章が気持ちいいので「どういうことだったんだろ?」と考えながら読み返すのが実に楽しかったです。
キリッと冷やした辛口の日本酒を飲みながら読めたら最高だろうなー。

D07 Over the Rainbow:いつか輝ける虹の下で

まさかの英語。
とりあえず、英文が始まったところで、同じブロックでよかったとしみじみ思いました…。
この話し、どうやって推理すればいいんだろ…? 消去法とチャネリング(※勘)で推理するしかないのかな…?

手紙の端々に筆者(作者さんではない)のジーンへの愛情がにじんでいて、特にバレンタインのとらたぬのあたりで、これはもしかして…もしかして…と思っていたら、最後にloveが出てきてコロンビアのポーズとりましたね!
ただ、私の英語読み取り能力と知力の問題で、「ん???どゆこと????」と思った部分があったので、アヤキさんの和訳をはやく読みたいです。

D08 R18-G

タイトルを見て、どんだけエグい話なんだ…と身構えながら読みましたが、エグくなんてありませんでした。
横の糸を張らずに、ひたすらお人形さんという縦の糸だけで長い物語を作り上げていく思い切った構造、すごいなーと圧倒されるばかりでした。
いろんな女たちが通り過ぎていって、そのひとりひとりに(量に差はあれ)言及されていて、彼女らが過去、といか歴史に変わってゆく過程を俯瞰で、でも主人公の目を通して把握することができて、その壮大さがたまらないなぁ。
変わってゆくものは時代だけではなく、主人(いろんな意味で)、名前、性別…といくつもの要素が重ねられてゆくのがまた印象深くて、ああ~って感じです…。

D09 夏の虫

とうがねぶんぶん。これがまた脳内エンドレスリピート状態になりやすい単語で…。
意味もなく「とうがねぶんぶんとうがねぶんぶん」とTwitterでつぶやきまくれなくてつらかったです。
とうがねぶんぶんの語感はもちろん、ストーリーも文章もすごく好きな作品です。
どんどん現実と非現実の境目があいまいになるような表現が重ねられた上で、あのラストですからね…。
飛んで火に入る夏の虫、というのは別に光に焦がれているわけではなく、本能で光に向かってしまって火に飛び込んで焼かれてしまう。そこに悲哀を感じざるを得ない。
その感覚をさらに色濃く煮詰めたような形でよみがえらせる…というか引き起こす話。

D10 ひかりのかみ

ん?んん?んんんんん?ってなりましたね…ラスト…。
終盤は比較的淡々としていて、読み手である私も含めるすべての人間が展開をすんなりと飲み込んで、とんとんと話が進んでいって、目的地にたどり着いたと思った矢先にあの出来事…。
自分が殺されたと気づく前に死んでいた感あふれていて、もうほんと「ん?」としかならないんですよ…。「あれ?」未満の違和感しかないんですよ…。
なんとなくグリム童話の『トゥルーデおばさん』を思い出しましたが、あの話で出てくる娘とは違ってハンナは悪い子じゃないから、心底容赦ないなーとしびれました。
神さまという存在の理不尽さが浮き彫りになっている感。じたばたせずにサクッと終わるところが「それっぽい」なーと思いました。

D11 多眼の種

素朴な村の風景とヘビーな物語の落差がたまらない…。
多眼ってビジュアル的にもエグくて、それが冒頭のおひさまみたいな女の子に発症しているのかと思うと、やはりたまらない…。
あと、ひととの関わりを避けて引きこもりがちでそこはかとなく暗そうなにおいがするけど女の子のために行動しちゃうセスにもたまらないものがありますね…。
ぶっ飛んでそうだけど(いやどう見てもぶっ飛んでる)お母さんが、息子とそこはかとなく良好そうな関係なところもたまらない…。
セスの目が性格を物語るだけではなく、改善の鍵になっているところもたまらない…。
ラストの静かな風通しの良さもたまらない…。

D12 ゲーム世界に転生して神になったと思ったが、どうやら勘違いだったようです。

冒頭から双丘!おっぱい!かわいい美女!膝枕!パイタッチ!そして竿立ち!竿立ち!竿立ち!
これだけでもテンション上がるお話なんですが、ラストはもっとテンション上がります!朝起ちとか言ってる場合じゃなかった!
ラノベ(というかなろう)調のタイトルと設定なのでチートで俺Tueeeeeeeee!!!!でもやっていくのかなーと思いましたが、中盤でトーンがロストしたあたりで、ストーリーも文章も重たい暗さを帯びはじめて、私のテンションと反比例するように期待感がじわじわと上がってきまして…。
ゲームクリアからの怒涛の種明かし、どん底に突き落とされた…と見せかけてそこから一気に浮上しての力強いラストにたいそう興奮しました。打ち切りエンドの常套句がかっこいい。
情報量は多いけど構成が整ってるからすごく読みやすいし、ジェットコースターに乗っているみたいで楽しかったです。