『さよならユーリカ』感想

瓜田すいかさんの薄い本の感想。
J.GARDEN41戦利品。

■ タイトル:さよならユーリカ
■ ジャンル:バンドマン×ファンの大学生なBL

↑のジャンルを書いていてやっと気づいたんですが、ファンの子が右側だったんですね…。
というコメントが出てくる程度にプラトニックなお話です。

ものすごくしみる作品だったんですが、描かれている関係性もさることながら、風景や質感が異様に郷愁めいた感覚をあおってくるんですよ…。
ハロルドセンがどんなふうに活動していたのかとか、ライブの空気感とか、酒の飲み方とか、焼き鳥屋にいるときの空気感とか。
そんなかつて眺めていたものたちの気配にあふれた世界で、私好みの物語が展開されるわけだから、そりゃあ琴線に触れまくるわけだなぁと思いました。

解散してしまったバンドのボーカルとそのバンドのファン、もともと接点はなくてこれからもつながることのなかったはずのふたりが出会ってしまって、相手に関心を持ってしまって、交わるはずのなかった人生が絡み合う(性的な意味ではない)ことになって…なんて魅力的に決まってます。
ふたりは偶然出会ったように見えるけど、江上はハロルドセンに救いを求めて実際に救われたし、紙島も「歌っていたい」という気持ちを肯定してくれるなにかがほしかったわけだから、必然だったんだろうなぁ…という感慨もたまらないです。
互いの過去とか事情とかは最低限しか語られないけれど、だからこそでも細く鋭く本質をつくような交わり(性的な意味ではない)がよりいっそう印象的になっていたんじゃないかなぁと。
絡まった糸がするっと解けるようなラストも、清々しさと寂寥感が混ざり合っていてすごく好き。
そしてエピローグ部分にあのシーンを持ってくるのはズルすぎる…。

表紙を眺めていて2006年の物語だったことに気づいたときには、「ああー…」と崩れ落ちました。
言われてみたらたしかに小道具とかふいんきとかそんな感じ。