『眩暈の紫』感想

跳世ひつじさんの薄い本の感想。
第4回Text-Revolutions戦利品。
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■ タイトル:眩暈の紫
■ ジャンル:ラブ&バイオレンスなファンタジー

双子と師弟、2種類のもつれにもつれあった関係性を味わえる作品。
一粒で二度おいしい、というやつです。

2つの関係性がさらに絡み合って、たいへん濃厚なことになっています。
それぞれがものすごく重たいというか、濃すぎて苦しいというか、めちゃくちゃハードな食べごたえなんですが、
それゆえにもつれた糸がほどけた後の開放感がすさまじかったです。
ずっとにぎりしめていたものを手放したときの爽快感と、風通しが良くなったがためのさみしさがありありと描かれていて、すごくここちよい。

暴力、依存、死に対する恐怖、赤錆色の雨、そこはかとなくただようアングラ臭…と暗くてねっとりとしたものが散りばめられているのですが、物語が収まる場所はとてもすこやか。
ヴァイオレットという「おんな」の他者の死を通じた成長モノとして、きれいに完結しているんですよね。
だからこそ、中盤までの印象に反して読了感が最高にいいんじゃないかなぁ、と…。

あきらめること、理解しあえないことを確認すること、その上で愛することを許すこと。
それでもぬぐいきれない痛みを受け容れて生きていくんだろうなぁ。
そんな人間の「強さ」を見いだせて、満足しながら本を閉じた作品です。

…と書くとどこまでも健全な話のようですが、実際は「暴力はセックスだ!」系です。
えっちな表現のデパート、つまり全年齢向けエロ本です。