ウォンマガ夏フェス 感想⑤

ウォンマガ夏フェス2015感想続きの続きの続きの続き。

黎明を頂く

現代ファンタ…ジー…?
おもしろすぎて死ぬかと思った…不意打ち食らってむせそうになったりしました…
冒頭で「アレ?」っと思ったところが、日常パート(?)で全力で回収されているというか突っ込まれていてすっきり。
創作のネタ出し・初期プロット練っているときのスカイプのノリにすごく近くて(だがしかしここまでぶっ飛びつつ理性的ではない)、これは創作あるあるネタを詰めこんだ作品なんだな…と思ったところでまさかの展開すぎる。
個人的にはビール瓶が好きですね!

ティル・ナ・ノグのホワイト猫男爵についての報告書

ファンタジー…でいいのかな…
なんて(消化するのが)ハードなお題…と思ったけど、たしかに楽園が描かれていて、猫男爵に導かれる物語でした。
文章がとにかく幻想と癒やしきれない悲しみの洪水という印象で、いろんな意味でためいきが出ました…
美しい世界に迷いこんでも孤独で、袋小路のままの主人公の心情が、常世の情景と混ざり合ってなんとも淋しげな印象。
ラストの一文に、肋骨に風が吹き抜けるようでありながら、心臓をぎゅっとつかまれるような感覚に襲われました。

右手をひかれて孵る午後

ハイパーリア充ストーリー。わたしはしんだ。
コーヒーもケーキもおいしそうで、飯テロ的な意味でもしにそうでした。
甘酸っぱ!青春なんて滅んじまえ!と叫ばざるをえないよい距離感(恋愛的な意味で)の男女関係に憤死しそうになりましたが、そこはかとなく散りばめられた為になる知識に、溜飲を下げにいたりました。
ラストのさわやかさ、落とし所の絶妙さのおかげで、読了感は最高です…これなら成仏できる…(´・ω:;.:…

緤めいて咲う

現代恋愛もの。
「一人の猫」という表現が、作品をとてもよく表していると思います。
謎めいた出だし、謎めいた女性、謎めいた設定…と謎が積み上げられた末の謎ときで、視界が一気に開ける感覚はなかなか得がたい快感…
謎ときも単純なものではなくて2段仕込み。だからおいしくておもしろい。
みずみずしくて透明感があっていい意味で物語っぽいんですが、おかげで重たくなりそうな真実が短編にふさわしい重量感で表現されていて、読後感も気持ちよかったです。

雨粒のくじらは秘密を歌う

箱庭系(?)SF。
ちょっと退廃的な世界と、生きるためになかなかえぐいことをしている人類。
主役の「絵描き」もなかなかいい性格をしています。
でも、読み終えた途端床を転げまわりたくなるくらい、心満たされるお話でした…
えぐいことになった人類にえぐいことをする展開があるんですが、それが最終的に救われるような要素につながっていて、曇のち晴れ展開が好きな私としては興奮せざるをえないです。
担当者のまっすぐさが報われる瞬間は、「この話を読めてよかった」と思った瞬間でもあります…