『セルロイド』感想

2017/11/27にPrivetterへ投げた同人誌感想です。
文体(というか語尾)がいつもと違うのが気になるけど、未来の自分のために再録しておきます。

■ タイトル:『セルロイド(※R18)』
■ 作者:まゆみ亜紀さん
■ ジャンル:現代ファンタジー/BL

私はこう見えても多少はまゆみ先生の作品にはくわしいんだ!なんといってもまゆみ作品を3連続で読んでラリったからね!という壮大な勘違いを根拠に申すと、『セルロイド』はいつもどおり(?)幻想と日常が違和感なく同時に存在していて、粘液が絡みついてきて、しかしとてもえっちだ。
そう、えっちなのだ。すけべではなくえっち。
私は「すけべ」をケツ穴寄り、「えっち」をちんこ寄りの言葉として使い分けている(他の人は知らん)。ふだんのまゆみ先生の作品はケツ穴寄り(というと誤解を買いそうなので補足しておくと、快楽の受容に重きを置いている感じ)だから「すけべ」なんだけど、『セルロイド』はストーリーがちんこに牽引されているので「えっち」だ。おわかりいただけただろうか。
えっちというのはある種の暴力なので、私は『セルロイド』を通してまゆみ先生に殴られたわけである。

また、まゆみ先生といえば人間の体温で話を書くひとだ(まゆみ先生は「ひと」なのか?という異論は認める)。
『セルロイド』は体温があるといえるか否かギリギリのラインの温度感だった。ひんやりしているんだけど石や金属のようなきーんとした冷たさではなくて、生きている人間に触れて「つめたっ」となるような感覚。かといって、外気にさらされて冷たくなった皮膚の感触とはまた違う。人間の発する熱でぬくまったセルロイドの感触に似ているのかもしれない。
それは水中で肉体を作り替えられた七重のイメージにそっくりそのまま重なる。七重は人間の男の姿をしているし、実際に数年前までは人間だったけど、今は人間とは異なる存在になってしまった。「人間のようだけど人間ではない」ものに対する違和感めいた感覚が、文章の温度感によって際立っている。
『セルロイド』の作風は人肌になじむ一方で硬質。まさにセルロイドだ。

まゆみ成分でラリっているので自分がなにを言っているのかよくわかってないけど、なにはともあれ七重にちんこを突っ込んでいた月の王様を醒ヶ井が掘るところが特に最高だった。月の王様にも穴はあるんだなあ…。
性というよりも生という感じだった。弱肉強食。よりつよいものが蹂躙する側に回る。シンプルでなまぐさくて、だからこそ美しい。
甘さのない硬質な装丁に惹かれたら、ぜひ手に取ってほしい本だな~と思いました。実にえっちだった。